湿式剥離工法 PSリムーバーシステム

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“ペンキ屋”の私たちが、どうして、どのようにして、
実験・分析装置を揃えてまで、
このシステムを開発したのか。お話しします。

代表取締役 村瀬栄次

私たちペイントサービスは、長年、鉄塔や橋梁、さまざまな建築物の塗装工事を中心に手掛けて、成長してきた会社。いわば“ペンキ屋”です。
そんな私たちが、いったいどうして、これまでにない塗装剥離システムを創り上げることになったのか。お話ししましょう。

鉄塔や橋梁、さまざまな建築物には、塗装が施されています。塗装の表面は、汚れやコケが付いたり、錆びたり傷んできたりしますので、定期的に塗り替えることが必要です。
しかし、防錆を目的として塗装されてきた塗料には、鉛が含まれていることがあります。
1990年代までは、JIS規格のサビ止め塗料の多くには、鉛が含有していました。しかも含有量が60%を越えるなんていう今では考えられない塗料が、ざらにありました。

鉛は、わずか数mgを数週間にわたって体内に摂取すると、慢性鉛中毒を起こします。アスベストが問題になって久しいですが、アスベストは、摂取してから身体に影響が出るまで30年程度かかると言われています。ところが鉛は、わずか数カ月後には影響が出ます。それほど危険性の高い物質なのです。
2003年には、塗料製品に関するJIS規格が改められましたが、大量の有害物質で塗装をされた建築物が無数に残っています。

私たち塗装業者は、建築物の塗装工事を請け負うと、まず素地調整をします。塗装の表面を削って、旧い塗装を剥がしてから、新たに塗り直すためです。
素地調整では、塗料の中に含まれている有害物質も一緒に削ります。つまり、鉛が粉じん化します。周辺の環境にも粉じんを散らしてしまいます。
私たちは、どうにか作業員や環境への悪影響・危険性を低減させることができないかと、自分たちなりに研究し、試行錯誤を続けていました。

私たちが、有害物質を粉じん化させないためには剥離作業を湿潤状態で行うことが不可欠だろうと考えていた、2014(平成26)年のことです。
厚生労働省が「鉛等有害物を含有する塗料の 剥離やかき落とし作業における 労働者の健康障害防止について」という通達を行いました。
そこには、「剥離等作業は必ず湿潤化して行うこと」 が義務づけられ、「粉じんを外部に持ち出さないよう洗身や作業衣等の洗浄等を徹底すること」など、作業場の環境や、作業後の運搬、貯蔵などについても徹底が求められていました。

私たちはさっそく、新しい標準と定められている湿式の剥離工法を取り入れました。2017年頃から2019年頃にかけて、通信用鉄塔の剥離工事を10件近く、水系(湿式)の剥離工法で手掛けたのです。
しかし、次々に問題が出てきました。

・そもそも、水系の剥離剤をうまく塗れない。刷毛やローラーで塗るので、特に狭窄部やボルト周りなどの個所にはうまく塗れない。
・苦労して塗っても、剥離剤が垂れてきてしまって、適量を保持できず塗膜に対して効かない。
・塗膜が軟化しても、電動サンダーや、スクレーパー、ワイヤーブラシなどを使った剥離作業では、たいへんな労力がかかり、塗膜が取れにくい。
・湿式であるぶん、乾式に比べると粉塵は飛びにくいが、剥離した塗膜片が飛び散る。塗膜片の回収には手間取る上、有害物質を含んでいるので、危険性が高い。
などと、すべての工程で課題がありました。

そんな中、事故のニュースが次々と聞こえてきました。
水系(湿式)で行われていた首都高速や東名高速の橋脚部での塗装工事で、剥離をして集積した塗膜片に電気サンダーの火花が、引火して爆発し、死亡事故となった例が相次ぎました。
「水系に変えても、それだけでは何も根本的に解決しない。なんとかしなくては……」
「よい工法がないのなら、自分たちで創るしかないのでは……」
そんな、やむにやまれぬ思いで、私たちは、新しい工法の研究を始めたのです。

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